まさか今になって、ウド・キアー主演のこんな傑作が観られることになるとは思ってもいなかった! 77才にして大復活、と言いたくなる名演を見せる彼は、かつて「ミスター・パット」なる名物ヘアドレッサーとして一世を風靡しながら、いまは孤独に老人ホームに暮らす主人公に扮する。
ある日、かつて仲違いした親友から彼の元に、“最期の頼み”が届く。予期せぬきっかけで、埃にまみれていた商売道具を取り出し旅に出る彼は、みるみるやる気を回復していく。
パステルカラーのスーツを着てクラブで踊ったり、ピンクの帽子をかぶって堂々と街を闊歩するウド・キアーの、艶やかでお茶目な姿がまぶしい。その輝きは、内からにじみ出る尊厳があればこそ。たとえ時代遅れと言われようと、自信を持って生きればいいのだ、という、老境の格好いい生き方を、ウド・キアー版ミスター・パットから、しかと学びたい。