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イヤな映画、主人公の悲劇がお好み
真魚 八重子
映画評論家
スワンソング
22/8/26(金)
シネスイッチ銀座
現在77歳のウド・キアーは、美貌の怪優として様々な映画を彩ってきた。その彼の、老境のまさしく代表作となる主演映画である。役柄は現役を退き、老人ホームに住む美容ドレッサーのパット。彼のもとに昔の友人が亡くなり、死化粧をしてほしいと依頼が届く。仲違いしたままの友人だったが、パットはとりあえず故郷へと向かう。元々差別を受けてきたゲイコミュニティの人々にとって、エイズの流行は最悪の時代となった。パットの伴侶もエイズで亡くなり、それ以来一人で暮らしてきた。しかし彼はいまもしたたかに、バッドテイスト全開のペパーミントグリーンのスリーピースのスーツで、陽気な悪態をつきながら旅を続ける。ゲイたちの出会いもハッテン場からネットへと変化を遂げるが、青年たちの繊細さは変わらない。一人のお手本となる魅力的なゲイとして、ウド・キアーが最高に輝いている映画である。
22/8/18(木)