Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

時代と向き合う映画を鋭い視点で紹介

佐々木 俊尚

フリージャーナリスト、作家

雨を告げる漂流団地

今でもよく見かける老朽化した団地。エレベーターなどなく、数カ所に設けられている階段の両側にふたつ玄関ドアがある形式(昔の日本住宅公団はこれに「縦長屋」と見事な名称をつけていた)。それが地面から離れて、船のように海を快走するという設定にまず心ときめく。そしてそのファンタジーな設定とともに、老朽団地の内部の描写が素晴らしくてほれぼれとする。こうした団地の多くは昭和の半ばに建てられ、当時は最先端の住まいだったが、現代の視点から見れば間取りはチマチマと狭苦しく、年月とともに薄いステンレスのキッチンはボコボコと凹み、砂壁は剥げてしまっている。そういうありさまが実にリアルに描かれている。 物語もとてもよくできている。しかし物語では正面切って描かれていない、かつて輝いていた団地が老いぼれていくこととそれへの切なく懐かしい郷愁が底流にあって、とても共感できる素晴らしい作品だった。

22/9/19(月)

アプリで読む