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村山 章

映画ライター

必殺!恐竜神父

アマゾンプライムビデオのオススメ機能が、ある日突然『必殺!恐竜神父』なる映画をねじ込んできた。読んで字のごとく、B級C級Z級の劇場未公開映画なのだが、これはナメとったらアカン案件だと声を大にして言いたい。 信仰を失いかけた若き神父が、なぜか恐竜に変身する力を手に入れ、街のダニどもを成敗して回るが、恐竜神父と相棒の娼婦にはチャイニーズ忍者軍団の魔の手が迫っていた……と、プロットもバカげているが、着ぐるみ感満載の恐竜も安い。あらゆる要素がとにかく安っぽいので、呆れながらも微笑ましい前衛芸術のように観られるのだ。特にクライマックスのハリボテ感ある恐竜VS忍者バトルの絵面はアゴが外れそうになる。 ここまでならただのバカ映画なのだが、映画の印象は不思議と澄み渡っている。おそらく全編バカげているはずなのに、役者の演技が全員全力投球で、大真面目にエモーションを炸裂させているからではないか。映画とは基本的に絵空事であり、カネはなくとも絵空事を信じるパワーが宿っている。不思議と感動すらしてしまう。同じ感想を持ってもらえるとは思わないが、広い世界には通じ合えるひとがいるはず。海外でもカルト人気を得ているこの快作を、誰ともなく強くオススメしておきたい。

22/9/1(木)

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