評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!
注目の洋画系配信作品をプッシュ
村山 章
映画ライター
ハモンハモン
16日から始まった特集企画「“永遠女優” 甦る青春のアイドルたち <1980-90年代編>」で、1992年に初公開された『ハモンハモン』がリバイバル上映される。スペインの奇才監督ビガス・ルナのやりたい放題が詰まった衝撃作であり、撮影時17歳だったペネロペ・クルスのデビュー作だ(夫でもあるハビエル・バルデムとの初共演作でもある)。 簡単に言えば、スペインの田舎町で繰り広げられる2世代、男女6人のドロドロの愛憎劇。ただし“情熱の国”と呼ばれるスペインだけあって、ほとばしるパッションの量が尋常じゃない! 誰もが愛と欲望に突き動かされ、全編に「どうかしてる」ドタバタ騒動が詰め込まれ、「パッションに舵取りなど不要!」といわんばかりのカオスがスクリーンを占拠する。 いや、もう少し簡単に言うと、全編が「なんでやねん!」とツッコむしかない爆笑ラブコメで、クライマックスではタイトルの「ハモン(ハム)」にひっかけた骨付きハムで殴り合う最高の決闘シーンになだれ込む。いやあ、映画だもの。そりゃあ決闘くらい見せてくれないとですよね、と、90年代のクールなインディペンデントシーンに憧れていた若き日の自分を猛省したものです。 ビガス・ルナ監督は、この当時はペドロ・アルモドバルと並ぶスペインの気鋭監督だったのだが、その後は躍進するアルモドバルの後塵を拝する形になり、2013年に亡くなってしまった。しかし声を出して言いたいのは、90年代にマジでイカれていたのはアルモドバルよりビガス・ルナだったということ。 「“永遠女優” 甦る青春のアイドルたち <1980-90年代編>」という特集自体は、アラフィフ以上の世代の男性をターゲットに、昔憧れたアイドル女優のヌードやお色気シーンで売っている節があって、ちょっと限定されたノスタルジー過ぎやしませんかと言いたくなるのだが、マチルダ・メイ主演の『おっぱいとお月さま』も含めてビガス・ルナの映画がスクリーンで2本も観られる!というだけで奇跡のようにありがたい。 筆者としては『ハモンハモン』に人生を変えられたとすら思っており、このカラリとした可笑しさと謎の情念とシュールな世界観で彩られた『ハモンハモン』に、ひとりでも多く出会って欲しいのです。権威の威を借りるとベネチア映画祭の銀獅子賞受賞作。アゴがはずれるくらい面白いのでこの機会にぜひ! 『ハモンハモン』(9/23~9/29 池袋HUMAXシネマズ、10/7~10/13 シネ・リーブル池袋で上映)
22/9/21(水)