羊といえば、きっと誰もがまず、ぬくぬくと可愛い生き物を想像するはずだ。それをこんな、悪夢を催すような不気味な存在に変えてしまうとは、なんという映画だろう。 かつて子供を失った夫婦が突然授かった、“羊から生まれた羊ではない何か”。あたかも人間と心を通わせられるようなその生き物を、アダと名付け、夫婦は我が子のように育てるのだが。 セーターを着て花輪を被ったアダの姿を見て、ヴァルディミール・ヨハンソン監督のすっとぼけたセンスに感嘆させられるのも束の間、映画は壮絶なクライマックスに突入する。これまで『ローグ・ワン／スター・ウォーズ・ストーリー』ほか多くの映画で特殊効果や技術部門を担当してきたアイスランド人監督の、満を持しての長編デビュー作を見逃すべからず。

22/9/22(木)