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ホラー、動物モノ、トンデモ映画を発掘
春錵 かつら
映画ライタ―
LAMB/ラム
22/9/23(金)
丸の内ピカデリー
迷える子羊たちは、子羊に目が眩んだ。 どんよりした広大な空とどこまでも広がる草原。美しく寒々しいその景色は、思い描く“アイスランド”そのものだ。その山間地域で羊飼いとして無機質に暮らす一組の夫婦の元に、「彼」は生まれてきた。それは果たして神の思し召しか、神のいたずらか。 本作はアイスランド・スウェーデン、ポーランド合作のファンタジーホラーだが、日本人には結構馴染むはずだ。「むかしむかしあるところに……」に馴染み深い日本人にとっては、子供のいない夫婦の元にある日突然子供が届けられる物語は定番中の定番。生まれた時から小指サイズの一寸法師、かぐや姫は竹から生まれたし、桃太郎は桃から生まれた。 もはや彼らが何者なのか、なんて野暮な話はしなくて良いのかもしれない。…いや、良くない!良くないよ!!物語もそんな感じに進むのだ。 母性は母に狂気を孕ませ、恩愛は狂気を執行させる。 世界のどこかで今この瞬間も生まれている奇蹟と無慈悲。本作では「ささやかなものを望んでいる」というエゴイズムが描かれている。そしてその裏には必ず犠牲となる誰かがいるのだ。
22/9/24(土)