水上勉の名著『土を喰う日々』を沢田研二主演、中江裕司監督という魅惑のコンビで映画化している。予告篇には沢田研二と松たか子の恋愛話的なところが前景化されていることもあり、鑑賞前には「また余計な人間ドラマに傾斜しすぎて日本映画の悪いところが出てなきゃいいけど……」とおそるおそる感があったが、さすがの中江裕司監督、そんな心配は杞憂だった。主人公の地に足着いた日々を描いていて素晴らしく、老境に入った沢田研二の演技も淡々と好感が持てる。そして何より、土井善晴さんの料理が堪能でき、料理好きの人ならすべてのシーンに感動するだろう。