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夏目 深雪
著述・編集業
愛する人に伝える言葉
22/10/7(金)
新宿ピカデリー
末期がんで余命短い男バンジャマンを主人公にしたエマニュアル・ベルコの新作。死を徐々に受け入れていくバンジャマン、息子が自分より先に逝くのを受け入れられない彼の母親、認知されなかったバンジャマンの息子など、いくらでも陳腐な話になりそうだが、「俳優のフランス映画」の矜持を感じさせる傑作となっている。 バンジャマンをブノワ・マジメル、母親をカトリーヌ・ドヌーヴが演じると聞けば、「それじゃあ(映画がいいのは)当然だ」で終わりそうだ。だが、患者とネガティブなことも共有し、一緒に闘い抜こうとするドクター・エデをモデルとなった実在の医師ガブリエル・サラが演じ、バンジャマンを支える看護師をセシル・ド・フランスが演じる。この2人の映画での存在感もとても大きく、一人の男性が「余命をどう生き抜いたか」というだけでなく、死を目前とした一人の男性を「どう見送るのか」というところにもドラマがあるのが、この映画のオリジナリティと清新さの理由であろう。
22/10/5(水)