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水先案内人のおすすめ

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アニメも含め時代を象徴する映画を紹介

堀 晃和

ライター(元産経新聞)、編集者

アフター・ヤン

静かな映画だ。観ていて自分の呼吸が分かるほどに。セリフや音楽、街の音が、観る者の感情を必要以上に刺激しない。そして、過度な明るさを排除した落ち着いた色調の映像に心が安らいだ。 テーマ曲は坂本龍一。ずっと聴き続けてきた音楽家だ。その名前を見つけて、2017年のアルバム『async』を手に取った。曲はもちろん、ジャケット写真の色調が本作によく似ている。環境音を取り入れたこの作品を聴いていると、日常のストレスをしばし忘れて、とても穏やかな気分になる。この『アフター・ヤン』にも、そんな心の“凝り”をほぐす優れた作用がある。 舞台は近未来。茶葉の販売店を営むジェイク(コリン・ファレル)は妻カイラ、中国系の養女ミカと3人暮らし。実はもう1人“家族”がいた。「テクノ」と呼ばれる人間そっくりの家庭用ロボットのヤンだ。しかし、ある日、故障して動かなくなってしまう。ジェイクは、ヤンのメモリバンクに収められた動画の中に若い金髪の女性を見つけて…。 女性はヤンにとってどんな存在なのか。謎を追う展開とともに、静謐で端正な映像に心が揺さぶれた。「静」の中の「豊かな感情」。コゴナダ監督が、小津安二郎監督の信奉者だと知って大いに頷いた。

22/10/15(土)

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