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歌舞伎、文楽…伝統芸能はカッコいい!

五十川 晶子

フリー編集者、ライター

国立劇場 令和4年11月歌舞伎公演 "歌舞伎&落語 コラボ忠臣蔵"

この11、12月は團十郎襲名披露興行へ気力体力経済力まで全集中……という方も多いはず。とは思いつつ、ちょっとユニークな公演が行われているので、11月の国立劇場にも注目してほしい。歌舞伎と落語のコラボなんて、これまでありそうでなかった企画だ。 テーマは『忠臣蔵』。歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』は人形浄瑠璃を基にした義太夫狂言だ。落語にも忠臣蔵にまつわるネタは多い。『淀五郎』『七段目』『九段目』、そして今回、落語では春風亭小朝が『殿中でござる』と『中村仲蔵』を披露する。 忠臣蔵の五段目といえばいわゆる弁当幕、お客は弁当を食べていて誰も舞台に注目しない幕だった。その地味な五段目に登場する斧定九郎は塩冶家の家老・小野九太夫の息子だが、素行が悪く”親も見放す放蕩息子”。お芝居の中では山賊のどてら姿という野暮な恰好で登場する端役にすぎなかった。仲蔵は突然この役を振られ、役作りに腐心する。そしてある時ある場所である人物に出会い、これを機に定九郎という役の表現を一変させる。そしてこれが大評判となる、という噺だ。 この噺を聞いていると定九郎のこしらえが、そこから覗く役の性根が、どのように変わっていったのかがまざまざと目に浮かぶ。この落語の後に幕間を挟んで歌舞伎の五・六段目が上演される。五・六段目の主人といえば早野勘平だが、今回のもう一人の”主人公”定九郎を中村歌六が初役で勤める。 さて、肝心の定九郎のこしらえは、仲蔵の工夫により具体的にどんなふうに一変したのか。それはぜひ劇場で、目と耳と想像力をフルに使って体験してほしい。歌舞伎ファン、落語ファンでも、落語、歌舞伎と続けて見聞きすることで新たな仲蔵や定九郎を発見できるかもしれない。 ちなみに、江戸時代、安永~天明年間に江戸歌舞伎の大立者の一人として活躍した初代中村仲蔵の逸話が残されており、落語や歌舞伎の現行演出のベースとなっている。仲蔵は踊りの名手でもあり、出世の後は『曽我』ものの工藤(釣狐の工藤)、『関扉』の関兵衛など仲蔵の型や仲蔵振りといわれる表現も後世に残した。

22/10/21(金)

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