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小劇場から大劇場まで、年間300本以上観劇。素晴らしい舞台に出会うため、気になる作品は何でも観ます。
森元 隆樹
演劇ジャーナリスト/プロデューサー/演劇伝道師/読売演劇大賞選考委員
【一部公演中止】ショウ・マスト・ゴー・オン
22/11/7(月)~22/12/27(火)
キャナルシティ劇場、 京都劇場、世田谷パブリックシアター
私が初めて本作品の舞台を観たのは1994年4月、紀伊国屋ホールであった。残念ながら1991年6月に本多劇場で上演された初演は観ていないが、先程「初めて本作品の舞台を観たのは」と書いたのには訳があって、この作品は、1992年4月30日に、フジテレビによって「TV版」が放映され、そちらを先に観たからである。資料を見ると1992年4月30日24:40~27:39に放映となっている。さすがに30年前のことゆえ、3時間ドラマであったことは全く覚えていなかったが、とにかく面白すぎて、テレビの前から動けなくなったことだけは覚えている。練り上げられた脚本と、的確な演出、そして手練の役者たちの見事な演技によって、テンポの良い笑いが次から次へと畳み掛けられていき、ただただ笑っているうちに、エンディングまで連れて行ってもらったのである。 そして1994年4月、紀伊国屋ホール。 その頃、何度か拝見した劇団サンシャインボーイズの舞台の笑いの密度に圧倒される中で、あの日「TV版」で画面に釘付けになった『ショウ・マスト・ゴー・オン』の「舞台版」を、ようやく拝見できるのである。私の期待はいやが上にも高まった。 <<<<>>>> 劇団東京サンシャインボーイズの公演以来28年目の再演です。 令和の時代に合わせてリニューアルしておりますが、開幕して3分で笑いが沸点に達し、そのままラストまでずっと煮えたぎっている構造は、全く変わっておりません。 <<<<>>>> 今回の公演のホームページに、三谷幸喜氏自身が書き記している<イントロダクション>の文章に、些かの誇張も無い舞台が、そこにはあった。もちろん、観客であった私には、正確に3分なのかどうかは分からないが、「気付けば笑いは沸点に達し」そして「観客の笑いはラストまでずっと煮えたぎって」いたのである。 あれから28年の月日が経った今、三谷幸喜氏の手によって、再び『ショウ・マスト・ゴー・オン』が観られるのは、嬉しい限りである。 そして28年経ったということは。 1994年9月~1995年1月にかけて上演された、東京サンシャインボーイズの『罠』の公演パンフレットの裏表紙に告知されていた、次回公演『リア玉』(2024年9月6日~8日/新宿シアタートップス)の上演が近付いたことを教えてくれる。 30年間の封印を解く『リア玉』への期待を膨らませつつ、まずは、28年ぶりの、『ショウ・マスト・ゴー・オン』で、時を忘れたい。
22/10/22(土)