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アニメも含め時代を象徴する映画を紹介
堀 晃和
ライター(元産経新聞)、編集者
パラレル・マザーズ
22/11/3(木)
ヒューマントラストシネマ有楽町
赤ちゃんの取り違えをテーマにした映画は過去にもある。是枝裕和監督の名作『そして父になる』(2013年)だ。小学校進学までに成長した2人の男の子と両家族の葛藤が描かれていた。 スペインの名匠ペドロ・アルモドバル監督の新作も、赤ちゃんの取り違えを起点にして物語が進む。ただ、是枝作品のような家族のあり方に焦点を当てた内容とは印象が異なる。もっと根源的な「血のつながり」や「家族のルーツ」を深く考えてしまう構成だ。 マドリードで活躍するフォトグラファーのジャニス(ペネロペ・クルス)は、法人類学者で既婚者のアルトゥロと恋に落ち、身ごもる。出産を控えた入院先で同室となった10代のアナも同じシングルマザー。2人は共に女の子を出産するが、ジャニスは我が子がアルトゥロや自分に似てないことからDNA鑑定を行い、衝撃の事実を知る。結果は「100%の確率で母親ではない」だった。 スペイン内戦の犠牲者だった曽祖父の遺骨発掘という使命も抱きながら生きるジャニスの強い眼差しが心に響く。ジャニスがアルトゥロと初めて結ばれた時の情景を、窓の外に勢いよく揺れる白いカーテンで表現した演出に惹かれた。開放的で何とも爽やか。幸せな心情が伝わってくる。
22/10/26(水)