『ランメルモールのルチア』
2年前、コロナ禍の中で行われたこのオペラの「翻案上演」は、ルチア一人が歌い演じるもので、他の歌手陣はすべて声のみ聞こえる「黒子」状態、合唱部分も大幅にカットされていた…。同じキャストが今度は同じ田尾下哲の演出で本来あるべきだった舞台に登場する。されば各人の思い入れは相当に強いはず。前回の歌唱がさらに密度濃いものになりそう。
最大の聴きどころであるルチア狂乱のアリア演奏には、作曲者ドニゼッティが最初に指定した楽器グラス・ハーモニカの名手サシャ・レッケルトが参加するのもポイント。フルートで代用されることが多いが、グラス・ハーモニカの幻想的な音色こそ、ルチアの狂気を彩るのに相応しい。劇場で実感したい。