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日本映画の新たな才能にフォーカス
イソガイマサト
フリーライター
雨の詩
22/11/12(土)
ポレポレ東中野
缶や瓶、廃タイヤなどで建築され、自然エネルギーを循環させて自給自足する“持続可能な家”としていま世界中で注目を集めている「アースシップ」。『祖谷物語-おくのひと-』(13)などで知られる蔦哲一朗監督の最新作は、2019年、徳島県美馬市に誕生したそんな日本初のアースシップ「MIMA」を舞台に、都会から移住してきたジンと彼に田舎での暮らし方を教える地元民テラとの触れ合い、交わりそうで交わらない彼らの心の変化と距離を静かに淡々と見つめていく。 16ミリの白黒フィルムで撮影された“画”には一切の無駄がなく、私たち観客は、叩きつけるように降り続ける雨と雨音、鳥や虫たちの声や闇が際立つ本作で田舎での生活を疑似体験しながら、自分のこれからの生き方を模索することに。 公共インフレの脆弱さが分かり、コロナ禍によって生活の在り方自体が変わってしまった現代。アンドレイ・タルコフスキー監督の『ノスタルジア』(13)を想起させる圧倒的な映像、劇中に挿入された蔦監督が敬愛する詩人・山尾三省の詩「火を焚きなさい」に何を思うのか? 地球と自分に向き合うことになる贅沢すぎる45分だ。
22/11/9(水)