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日本映画の新たな才能にフォーカス

イソガイマサト

フリーライター

すずめの戸締まり

新海誠監督を始めとした、本作の作り手たちの勇気と覚悟と表現者魂にまずは敬意を表したい。11年前のあの辛い記憶が横たわるこの作品がどれだけ素晴らしいものに仕上がっていたとしても、酷評したり、批難する人は必ずいるし、目を背けたい人もあの大災害がトラウマになっている人たちも少なくない。 だから、敢えてそこには触れず、避けて通る表現者もいるだろう。 すでにあれから11年。日本人を襲ったあの大惨事を知らない世代もいるけれど、あのとき起きたことを決して風化させてはいけない。 映画はエンタテインメントの側面とは別に、報道されない大切なメッセージを伝えたり、訴えたりする力と使命を持っている。そこに果敢に挑んだ新海誠監督は本物の表現者だ。 すずめと椅子に姿を変えられてしまった“閉じ師”の青年・草太が日本列島を縦断する本作は、ファンタジー色の強いロードムービーだが、彼らがそこここで目にする衝撃の過去は現実社会と地続きのもの。それが伝わるように、新海監督は劇中の風景や街並みを実際にあるものをこれまで以上に緻密にトレースして描写。街の看板や広告に実際の企業名を使っているのもそれを意識してのことだと思う。 扉を開けた先に何を見るかは観た者に委ねられている。未来に向けて作られたに違いない本作の希望が、多くの人たち心に届くことを願っている。

22/11/11(金)

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