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監督、俳優…新しい日本の才能に注目(2018年6月〜2022年12月まで担当)

野村 正昭

映画評論家

人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版

手足の指10本を凍傷で失い、奥多摩山中では熊に襲われ重症を負ったというエピソードなどを聞くと、そうまでして、なぜ、この映画の主人公・山野井泰史は、ハードな登山を続けるのかという事実自体、山の世界に疎い筆者には全く理解できない。ただ、2021年、登山界最高の栄誉といわれる「ピオレドール生涯功労賞」をアジア人として初めて受賞した山野井氏の足跡は、映画を見ていると、徐々に分かってきた。あえて〈単独・無酸素・未踏ルート〉に挑みつづける彼は、そのハードルが高ければ高いほど、闘志を燃やし、頂上をめざすのだ。関係者の証言や、生涯のパートナーである妻・妙子さんへの取材を通じて、伝説のクライマーの魅力が伝わってくる。自らも、ヒマラヤ登山の経験があるジャーナリストの武石浩明氏が監督することで、迫真の映像が捉えられ、手に汗握る快作になった。

22/11/23(水)

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