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映画のうんちく、バックボーンにも着目

植草 信和

フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

フラッグ・デイ 父を想う日

『デッドマン・ウォーキング』での刑執行の恐怖におびえる死刑囚、『I am Sam アイ・アム・サム』での知的障がいをもつ父親、『ミルク』での同性愛の政治家などなど、一筋縄ではいかない役柄を演じ続けてきたショーン・ペン。映画監督としても才能を発揮する彼の監督作品7作目の本作『フラッグ・デイ 父を想う日』では、初めて自身の監督作品に主演、社会に適合できない犯罪者の屈折した心理を卓越した演出と演技で表現していて、さすがと思わせる。 そのショーン・ペンが本作で挑んだ役柄は、1992年に起きたアメリカでの最大級の贋札事件の犯人であるジョン。家庭があり愛するジェニファー(実の娘のディラン・ペンが演じている)という娘がありながら、6月14日の国旗制定記念日「フラッグ・デイ」に生まれたがゆえに犯罪にからめとられていく男ジョン。まさにペンが得意とする崖っぷちを歩く社会不適格人間。苦悩が刻みこまけた顔の皴の深さが負の人生を物語る。 原作はジャーナリストのジェニファー・ヴォーゲルの回顧録。「ペンは構想15年をかけて監督・主演を果たした」とプレスリリースは報じている。ジョンは家族を裏切り続けるクズ人間だが、その笑顔や娘に寄り添う姿に人間的な温かみを感じさせるのはペンの演技力の成せる業なのだろう。

22/12/18(日)

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