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アニメも含め時代を象徴する映画を紹介
堀 晃和
ライター(元産経新聞)、編集者
月の満ち欠け
22/12/2(金)
TOHOシネマズ 六本木ヒルズ
2017年7月の直木賞で、佐藤正午の名が出たときは懐かしい思いがした。個人的には1983年のデビュー作『永遠の1/2』の印象が強く、若い頃の記憶が浮かんできたからだ。同作は87年に根岸吉太郎監督で映画化。2本立て興行で、もう1本は『私をスキーに連れてって』だった。 直木賞作品『月の満ち欠け』は、生まれ変わりをテーマに永遠とも言える男女の恋愛を描いた作品だ。瑞々しい文体による内面描写を、映像ではどう表現されているのか。そんな問いを持って観始めたが、それはすぐに解消された。もどかしい想いを抱えた男女の表情、仕草を丁寧に描くことで、時空を超えた2人の絆の強さが浮かび上がる。 小山内堅(大泉洋)は妻の梢(柴咲コウ)と娘の瑠璃を交通事故で亡くし、会社を辞めて、首都圏から故郷の青森・八戸に戻って暮らしていた。ある日、三角哲彦という男(目黒蓮)が訪ねてきて信じがたいことを話し始めた。娘は三角が学生時代に恋した“瑠璃”という女性(有村架純)の生まれ変わりなのではと…。 物語の起点となる1980年頃の描写が緻密だ。今とは違う横断歩道のデザインなどから時代の空気が伝わってくる。東京・高田馬場の駅前はオープンセット。雨のシーンが切ない。
22/11/23(水)