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日本で上映されるアジア映画はおまかせ

紀平 重成

コラムニスト(元毎日新聞記者)

柳川

チャン・リュル監督は中国出身の朝鮮族です。監督の経歴を見てもわかるように中国を振り出しに韓国や日本を回って観客に国境を意識させない多くの作品を作ってきました。とりわけ本作は池松壮亮やニー・ニーら日中の著名な俳優を初めて登場させ、舞台はほぼ日本。さらにスタッフは韓国というまさに「東アジア」合作映画です。 中年になり自分が不治の病と知った男ドンは疎遠だった兄のチュンを誘い柳川に向かいます。なぜ柳川? 実は20年前、2人が青春時代に愛した女性「柳川(リウ・チュアン)」と町の名前が同じだったからです。チュンの恋人だった彼女は突然姿を消し、いまは柳川で暮らしていることもわかりました。兄弟の間で謎だったチュアンにようやく会えたのです。 兄弟はどうなるのか、そして彼女は柳川にとどまるのか。3人のその後はもちろん気になりますが、突然消えた彼女に特別な事情はあったのでしょうか。カメラは柳川に張り巡らされた美しい水路と伝統的な街並みをゆっくり縫うように進みます。景色に見とれながらふと浮かんだ問いは、この映像美あふれる映画を通じて監督は何を描きたかったのかということです。 ヒントは登場人物が繰り返し吐き出す「ひどい世の中だ」という言葉です。この20年の中国経済の発展を必ずしも評価しない考え方。一方の日本は経済の落ち込み方はひどくても首相の悪口をはじめ何でも言える環境にあります。何を重視するかで評価は変わりますが、私なら日本を選びます。物価の高さには困りますが住みやすそうだからです。監督も明言はしていませんがこの20年の日本の変化を感じ取っているのかもしれません。 中国で圧倒的な人気を誇った中野良子も元気なところを見せています。

22/12/18(日)

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