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日本で上映されるアジア映画はおまかせ

紀平 重成

コラムニスト(元毎日新聞記者)

エンドロールのつづき

映画大国のインドで『ニュー・シネマ・パラダイス』を彷彿とさせる人間賛歌の映画が作られました。作品のほとんどは実際にパン・ナリン監督自身が体験した事とされ、少年が地方の小さな映画館の映写室に入り浸り映画の魅力に取りつかれていく姿を生き生きと描いていきます。 少年が映画好きになったきっかけがユニーク。厳格なバラモン教の信者である父親は、映画は低劣なものと考え監督が8歳になるまで映画館に行かせませんでした。ところが信仰しているカーリー女神の映画は特別だと言って近郊のギャラクシー座に連れて行ってくれました。人で溢れかえった映画館で滑り込みでチケットを入手し席に着くと、目に飛び込んで来たのは後ろからスクリーンへと伸びる光り一筋。そこには少年が初めて見る世界が広がっていったのです。出てくる様々なエピソードは少年たちが生きることに懸命で、なおかつ幸福な気持ちになることが信じられる世界なのだと訴えているように思います。 兄弟から土地をだまし取られ没落する一家の家計を駅でのチャイ売りでしのぐ父親と映画作りの夢を実現しようと対立する少年の話をメーンに、デジタル化で不要になった映写機や膨大なフィルムを溶かして再利用する姿まで映しだし、まるで「インド映画史」を見ている気持ちにもなります。 パン・ナリン監督は「道を照らしてくれた人々に感謝を込めて」と36人の巨匠たちの名を挙げて敬意を表しました。日本の監督では勅使河原宏、小津安二郎、黒澤明の3人が挙がっています。ではインドからは誰が?

22/12/11(日)

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