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日本映画の新たな才能にフォーカス

イソガイマサト

フリーライター

ラーゲリより愛を込めて

第二次世界大戦が終結したというのに、60万人超の日本人がシベリアの強制収容所に捕虜として不当に抑留されていた。そんな忌まわしい事実も、それこそタイトルの「ラーゲリ」が「収容所」を意味する単語であることも恥ずかしながら本作を観るまで知らなかった。 彼らはなぜそんな理不尽な状況に陥ってしまったのか? 帰国した者はなぜ生還できたのか? そんな歴史の闇に埋もれた謎を暴くヒューマンなドラマ、登場人物たちが辿る地獄絵に心をかき乱されたり、自然に怒りを覚えた。そこまで登場人物たちに近い感情でのめり込むことができたのは、実在の人物(中島健人が演じた新谷健雄は除く)に扮した俳優陣が自分に与えられた役の人物としてちゃんと生きていたからだ。 どれだけ酷い目に遭っても生きることを諦めず、仲間にも生きる勇気を与え続ける主人公の山本幡男役の二宮和也。戦禍で友人を失くしたトラウマから自身を“卑怯者”として蔑み、それに甘んじている松田研三役の松坂桃李。高圧的な態度で山本を敵対視する相沢光男役の桐谷健太。生きて帰るために卑劣な行動をとってしまう原幸彦役の安田顕。みんなそれぞれの性格や立ち位置での苦悩を体現していて、中島健人にしても最初のうちは誰だか分からない少年っぽさを無邪気に全開させて最年少でムードメイカーの新谷健雄に命を吹き込んでいた。 中でも終盤で見せる二宮の迫真の芝居にはただただ圧倒され、ここまでやるこの人はやっぱりただ者ではないと思わされる。そして、そんな二宮の芝居と呼応する、山本の妻・モミジ(北川景子)に会いに行ったクライマックスの各人の言動と佇まいに図らずもヤラれた。彼ら全員の芝居の相乗効果が、本作のメッセージをより強く印象づけるものになっていたからだ。

22/12/7(水)

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