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映画のうんちく、バックボーンにも着目

植草 信和

フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

エンドロールのつづき

映画館の暗闇のなかで一心不乱にスクリーンを凝視していた幼少期の体験、時空を超えてどんな世界にでも飛翔できることを教えてくれた映画への感謝の気持ち……。本作『エンドロールのつづき』はそんな映画への素朴な憧れと讃歌の念を抑えることができない、〈映画愛〉に充ちたインド映画だ。 チャイ(お茶)売りの少年が映画と出会いやがて世界で活躍する映画監督になる、というお話は監督のパン・ナリン自身の体験から紡ぎ出されたものだという。あまりに素朴、ストレートすぎるお話だが、フィルム上映のテクニックや映画作りの細部を丁寧に描くことによって映画の魅力を観客に伝える描写の数々が素晴らしい。ナリン監督の故郷であるグジャラート州でのロケを敢行。映画は映画館でしか観られなかった時代のゆったりとした時の流れや、9歳の少年の映画愛を美しい映像で表現した本年度アカデミー賞国際長編映画賞インド代表作。観客が一体となって映画を愉しむ映画館、スパイスたっぷりの手料理の他、インド映画ならではの歌と踊りも堪能できる贅沢な一篇だ。

23/1/1(日)

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