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映画から自分の心を探る学びを

伊藤 さとり

映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)

SHE SAID/シー・セッド その名を暴け

映画業界を大きく揺るがしたハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ事件。当時、自ら自身の被害を公表したひとりが女優アシュレイ・ジャッドだ。本作では彼女が本人役で登場していることやハーヴェイ・ワインスタインの肉声など、“本物”を織り交ぜることでセクシャルハラスメント撲滅を強く願って作られたことが、映像からひしひしと伝わってくるのだ。 更にモデルとなった実在の女性記者ジョディ・カンターを演じるゾーイ・カザンが夫と共に子育てをしながら取材を続けている姿を映し出したり、もうひとりの女性記者ミーガン・トゥーイーが産後鬱に陥り、仕事に復帰することで表情が明るくなっていく姿をキャリー・マリガンが体現したことからゴールデングローブ賞映画部門助演女優賞にノミネートされたことが推測できる。 だからこそ本作は、セクシャルハラスメントを描きながら、その問題と複雑に絡み合った社会におけるアンコンシャス・バイアスが女性を苦しめていることを示す映画になっている。そして彼女たちに救済の手を差し伸べるのが同性である女性たちという事実を描くことで、男性陣に問題意識を持って行動して欲しいと願っているような気さえした。 これは対岸の火事ではなく、自分たちの身近で起こっている問題。知ることに意義がある。

23/1/8(日)

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