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水先案内人のおすすめ

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ホラー、動物モノ、トンデモ映画を発掘

春錵 かつら

映画ライタ―

SHE SAID/シー・セッド その名を暴け

巨悪に立ち向かう作品がエンタメ業界で注目を集めている。今季のドラマ『エルピス』もそうだった。 本作はハリウッドのドンと言われた映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインによる性的暴行事件を告発した女性記者たちの実話の映画化。 鑑賞中、ずっと思っていたことは「これ、映画になりそうな話だな」だった。もちろん本作自体に蛇足なデコレーションやデフォルメは一切感じない。しかしそれほどにこの一連の事実は、まるでフィクションのような馬鹿馬鹿しさと低俗さで物語(=真実)をセンセーショナルに盛り立てていたからだ。 ワインスタインの行動は、まるで映画やドラマの悪人がやるステレオタイプの“ソレ”で、「醜悪」という言葉以外に適当な言葉が見当たらない。映画界のドンが映画じみた言動で醜態をさらし、それを映画で断罪されることは最たる皮肉だが、加えてそれを許してきた周囲の環境にも吐き気を覚える。 たったひとりの声が上がることで「me too」と声を上げられる人が続々と現れた。と、同時に、これだけの声が世界から埋もれていたのだ。私たちはなかったことにしてはいけない。なかったことにされてはいけない。確かに在った「その声」を。 力や金や権力が、それを持たざる者たちの声を殺している。どこにも潜むこの構図と、私たちは戦い続けなくてはいけない。政治に、会社に、学校に、家庭に潜むこの構図に、泣き寝入りしてはいけない。 本作で彼女たちの勇気に、その先には希望があることを教わるはずだ。そう思う人が一人でも増えることを心から祈っている。

23/1/11(水)

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