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水上 賢治
映画ライター
THE FOOLS 愚か者たちの歌
23/1/13(金)
ヒューマントラストシネマ渋谷
本作は、いわゆるバンドの軌跡を追った音楽ドキュメンタリーの部類に入るのだろう。ただ、その範ちゅうだけにとどまらないものがぎっしりと詰まった1本といっていい。 コマーシャリズムを嫌い、メジャーデビューもしていない。あくまで活動はアンダーグラウンド。バンドのフロントマンとなるボーカリストは幾度となく薬物所持で塀の中へ。その都度、バンド活動はストップし、空中分解になったときもあれば、ボーカリスト不在で活動継続のときもあった。その間に、メンバーが次々と死んでいく。通常のバンドならば、消滅してもおかしくなければ、そもそもファンにそっぽを向かれてもおかしくない。 世間からすれば「薬物」でフロントマンが何度も逮捕されているダーティーな問題バンドとなってしまう。でも、この「THE FOOLS」は確かに存在し続けて、多くの人に愛された。簡単に言えば、この作品にはその愛された理由が詰まっている。それは、ここに登場するメンバーの「生き様」といっていい。その「生き様」は決して綺麗ではない。でも、たまらなく愛おしく感じることだろう。
23/1/8(日)