Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

日本映画の新たな才能にフォーカス

イソガイマサト

フリーライター

そして僕は途方に暮れる

藤ヶ谷大輔(Kis-My-Ft2)のクズっぷりが最高だ。三浦大輔の同名舞台劇の映画化で、藤ヶ谷は舞台でも同じ主人公の裕一を演じていたから役が染み入っていたのかもしれない。だが、それだけではないだろう。 三浦大輔の作品にはその人が隠している人間の醜い暗部を炙り出すものが多いが、中でもこの裕一はトップクラスの最低な男。俺さま顔で気ままに暮らしていて、同棲相手や同級生に世話になっているのにいつも上から命令。それでいて関係が気まずくなると、さっさと関係を断ち切り、逃げて逃げて逃げまくるのだが、最悪なのは、裕一自身は自分の振る舞いに対する罪悪感が希薄なところだ。 そんな罪の意識に無自覚な裕一を演じるのは難しいと思うけど、藤ヶ谷はそんな彼をトボけた表情と自分勝手な言動でまんまと体現。観客の反感を背負いながら、都会のいまを生きる若者の脆弱な精神世界をリアルに伝えている。だから、笑って見ていたのに、他人事ではない瞬間もたまに訪れて心がザワザワしたりもするのだ。 そんな裕一を煽る10年ぶりに再会した父親役の豊川悦司、後輩役の野村周平にも注目したい。ふたりとのやりとりも絶妙で、本作の大きな見どころになっている。

23/1/12(木)

アプリで読む