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演劇鑑賞年300本の目利き

大島 幸久

演劇ジャーナリスト

ケンジトシ

北村想の新作を栗山民也が演出する『ケンジトシ』は、中村倫也(36)と黒木華(32)の主演・共演と共に今年早々の注目上演だ。 題名のケンジは宮沢賢治、演じるのが中村、トシは妹トシ、黒木が演じる。兄と妹の情愛深く、哀しい物語のようだ。というのもふたりは岩手・花巻の質・古着商の家で生を受けたが、賢治より2歳下のトシは大正11年(1922)、24歳で早世した。賢治もその11年後、37歳の若さで世を去った。短い生涯の中で、妹は兄に多大な影響を与えたのは知られるところだ。 中村は“カメレオン俳優”という異名があるらしい。時代劇からミュージカル、さらにはシェイクスピア劇の『ヴェニスの商人』ではポーシャ役で女形になった。舞台経験豊富、幅広い役柄から付いたのだろう。 一方の黒木は『ザ・キャラクター』で初舞台を踏んでからオーディションで『表に出ろいっ!』の主役を射止めた。野田秀樹、故18代目中村勘三郎が発表会見でその感性、度胸を褒めていたものだ。『書く女』では樋口一葉と取り組んだ。現代的でありながら古風さを合わせ持つ芸風が貴重な女優である。 北村想はこれまで『グッドバイ』で太宰治、『草枕』で夏目漱石、『お蘭、登場』で江戸川乱歩、『風博士』で坂口安吾という作家を扱ってきた。そして「雨ニモマケズ」―、『注文の多い料理店』や『銀河鉄道の夜』、『風の又三郎』などを代表作とする宮沢賢治。第三者から見る賢治像は興味津々。 コロナ禍のため当初予定した2020年6月の上演が無期延期になった経緯がある。約2年半、満を持しての舞台だ。

23/1/15(日)

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