”ピンク・クラウド”と聞けば、ロック・ファンはギタリストのCharのバンドのことを思い出すだろう。だが突如現れた謎のピンクの雲によって部屋の中に閉じ込められた人々の生活と心理状態をアート感覚あふれる撮影で仕上げた同名の映画は、ストレートに迫ってきたCharのバンドとは対称的にかなりねじれた奇妙な作品だ。2017年に脚本が書かれ、2019年に撮影された『ピンク・クラウド』の監督はブラジルの新鋭イウリ・ジェルバーゼ。ロサンゼルス・タイムズは「この幻想的な作品はパンデミックの現実を不気味に映し出している」と評しているが、コロナ禍で慣れ親しんだ心理状態を分析したとも言える展開は、ユニークで、新しいスリラーと言えるかもしれない。

23/1/24(火)