キャリアの初期に、オペラ『1日だけの王様』で失敗して以来、喜劇作品から遠ざかっていたヴェルディ。それは、社会の急速な変化によって喜劇作品そのものが受け入れられなくなったことにも由来するのだろう。 その後、悲劇作品の数々を生み出すことによってイタリアオペラの頂点を極め、オペラ王とまで呼ばれる存在となった73歳のヴェルディが、栄光のキャリアに終止符を打つ矢先の最後の最後に遺した作品が喜劇作品だったのは一体なぜか。 シェイクスピアの名作『ウィンザーの陽気な女房たち』を骨子とした喜劇オペラ『ファルスタッフ』には、「この世はすべて冗談！」というテーマのもと、人生を笑い飛ばしたヴェルディの深い思いが込められているに違いない。

23/2/1(水)