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アニメも含め時代を象徴する映画を紹介
堀 晃和
ライター(元産経新聞)、編集者
バビロン
23/2/10(金)
TOHOシネマズ日比谷
予備知識をほぼ持たずに映画を観ることがある。判断材料は“ハリウッド大作”や“SF”といったキャッチコピーやジャンルなどのわずかな情報。このため、観て“ハズレ”のこともある。本作は、監督も俳優も知らず、アメリカ映画であることとタイトルのみ。ただ観た結果は……“大当たり”だった。 舞台は1920年代のハリウッド。サイレントの時代だが、映画産業は栄華を極めようとしていた。無名女優のネリー(マーゴット・ロビー)は映画関係者の邸宅で開かれた豪華なパーティーに乱入し、注目を浴びたことで出演のチャンスを得る。その場には大俳優のジャック(ブラッド・ピット)の姿も。サイレントでは超一流だが、時代はトーキーへと向かい…。 喧騒と狂乱、熱気。パーティーでの乱痴気騒ぎを描くことで、監督は上昇気流に乗る当時の映画産業の側面を見事に表現してみせた。ネリーがスターへの階段を上る一方で、ジャックは業界の変化に戸惑う。その対比が、作品に豊かな陰影を与えている。メロディアスな音楽も心地よい。 ラスト直前に、ふと、ある監督の名前が頭に浮かんだ。この映画愛、そして流麗なクレーンショット。エンドクレジットに名前が映し出された。当たりだった
23/1/28(土)