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日本映画の新たな才能にフォーカス

イソガイマサト

フリーライター

すべてうまくいきますように

何ともモヤモヤした気分になる映画だが、鑑賞後にこの皮肉に満ちた邦題を改めて見直すと、そのモヤモヤ感がさらに増幅する。 本作は、『まぼろし』(01)、『8人の女たち』(02)などで知られるフランスの鬼才フランソワ・オゾンが実話をベースに描いた安楽死をめぐる物語。脳卒中で倒れ、身体の自由がきかなくなった85歳の元実業家・アンドレは、自分の人生を終わらせるのを手伝って欲しいと長女のエマニュエルに頼み、彼女は妹のパスカルと一緒に実行に移すが……。 自分の最期=死に方を、自分で決めたいという人の気持ちが分からなくもない。ヨーロッパではそれが普通に行われていると勝手に思い込んでもいたので、フランスでも法律的に難しく、合法的な安楽死を支援するスイスの協会に頼まなければいけないという事実を本作で知ったときは目から鱗だった。しかも、その交渉や段取りがとんでもなく複雑で、スイスに行く前に安楽死とその幇助がフランス政府にバレたらすべてが水の泡。なのに、何者かが警察に密告してしまうのだから、それらの障害をかいくぐり、計画を成功させようとするエマニュエルたちが邦題の願うような気持ちになるのも理解できる。 だけど、観終わって改めて思った。人には死に方を選ぶ権利はあるのかもしれない。でも、それを手伝った者たちにこびりつく、言葉にしがたいやるせない気持ちは誰が癒してくれるのだろう? エマニュエルに扮したソフィー・マルソー(『ラ・ブーム』)が最後に見せる、ストレスと疲労に満ちた表情がそう言っているような気がしてならなかった。

23/2/7(火)

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