Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

《ワールドツアー上映「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ》

遊郭・吉原での鬼たちとの壮絶な闘いのクライマックスから、始まる。 燃え盛る遊郭での闘いも決着がつく。すると、倒された鬼が兄・妹であることが分かり、回想シーンとして、この2人の悲しい生い立ちが描かれる。この2人の身の上は、小学生が読む少年マンガが原作とは思えないくらい、シリアスだ。倒す主人公の側も、兄と妹なわけで、その対比のコントラストが胸を打つ。 後半の冒頭では次の敵が示される。3Dアニメの技術を駆使した天地左右が自在に動くシーンは、船酔いに似た感覚になってしまうほど。続いて、闘いに勝利したものの傷つき疲弊した主人公の療養が、コミカルに描かれる。この緩急は、見事だ。だが、やがて不穏な雰囲気となったところで、映画は終わる。 公になっているので隠す必要もないが、この映画の前半・約1時間は、テレビで放映された「遊郭編」の最後の2話(第10話と第11話、)、後半は4月からテレビで放映される「刀鍛冶の里編」の初回(この回のみ60分)。この3編が続けて上映され、それぞれの「話」のオープニングとエンドロールもそのまま流れる。その前後に、全体のオープニングとエンドロールが加わった形で、本編部分では、新たに加えたり削るというような再編集は、あったとしてもごく僅かだと思う。音楽は劇場の音響にふさわしいように再ミックスされており、大迫力で鳴り響く。 たしかに、「テレビでタダで見ることのできるもの」だが、それをあえて劇場で上映するのは、作り手の「テレビも映画館も関係ない。いいものを作る」という意気込みが根底にあるからだろう。 実際、普通の(という言い方も変だが)劇場用の大作アニメと比べても、映像や音楽のクオリティは、まったく遜色がない。映像と音楽との一体感が完璧だ。テレビで見たとしても、見直しに行く価値はある。 そして、映像化にあたり省略ができない原作マンガの緻密も、改めて認識させられる。 アニメに関心のある人なら、見て損はない。物語やキャラクータをよく知らなくても、2時間はあっという間に過ぎると思う。

23/2/6(月)

アプリで読む