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日本&韓国演劇、フィギュアスケートも!
上野 紀子
演劇ライター
ミュージカル『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』
23/2/7(火)~23/3/12(日)
日生劇場、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、刈谷市総合文化センター 大ホール
物語はとってもシンプル。エジプトの警察音楽隊がイスラエルに演奏旅行にやって来て、迷子になり、かつての敵国の、何の見どころもない街の住人たちに一晩ご厄介になるお話です。ミュージカルなのに派手なことは何も起きず、キレキレのダンスシーンもなく、流れて来るのは妙に胸を惑わす中東のメロディ。これが2018年のトニー賞10冠に輝いたと聞けば、観る前は不思議に思うでしょうが、観た後は誰もが大納得。両国の歴史的背景がもたらす滋味もさることながら、単純に、目の前で繰り広げられる人と人とのささやかな触れ合いに、こんなにも心動かされるとは! と感嘆の底無し沼にハマること請け合いです。中東のお話を日本人がやって伝わるの?なんて心配もまったく無用。劇世界をしぶとく掘り下げて旨味を引き出す名手、森新太郎さんの演出で、風間杜夫さんも濱田めぐみさんも新納慎也さんも他の皆さんも、「この役はこの人しかいないよね!」と頷きまくりのキャスティングです。何よりの見どころは、トップ・ミュージシャンたちによる演技&生演奏! 本コーナーであまりミュージカルを推さない筆者が(他の方が推すからいいかな、という意味で)本気で! 絶対! 観てほしいと願うミュージカルなのです。
23/2/8(水)