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パリ発、ヨーロッパで話題の作品を
佐藤 久理子
パリ在住、文化ジャーナリスト
エンパイア・オブ・ライト
23/2/23(木)
TOHOシネマズ 日比谷
本作を観て、そういえばサム・メンデスは『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』という傑作を生み出した監督だったと思い出した。この作品は若い夫婦の崩壊をドラマティックに描いたものだったが、新作は80年代英国の海辺の町を舞台に、心にトラウマを抱えた女性(オリヴィア・コールマン)と若い黒人男性(マイケル・ウォード)の触れ合いをしっとりと描く。 主人公たちが働くのが、“行き場のない人々”が集まってくる映画館(エンパイア)というのも、たまらない。映写室に飾られたポスターや写真からは、監督の映画愛が立ちのぼる。 階級社会や人種差別など、社会的な問題を背景にしながら、年齢も人種も異なれど、疎外された者同士が理解し合い、男女の関係を超えて交流を深める。そんなかけがえのない絆を結ぶことは可能なのだという希望を、本作はもたらしてくれる。
23/2/17(金)