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映画のうんちく、バックボーンにも着目

植草 信和

フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

コンペティション

『映画に愛をこめて アメリカの夜』『ブギーナイツ』『カムバック・トゥ・ハリウッド!!』『キネマの天地』『蒲田行進曲』などなど、映画製作の舞台裏を描いた映画は、洋の東西、出来の良し悪しを問わず、興味深くて面白い。 本作『コンペティション』もその例外ではない。スペインのある大富豪が名誉欲から放った「稀代の傑作映画を作る」の一言から物語は始まる。そして映画製作のために顔を揃えたプロデューサー、監督、俳優のプライド、エゴイズムが絡み合って底なし沼のような人間悲喜劇が展開するのだが、まず出演者の顔ぶれが凄い。 個性的でわがままな女性監督にスペインを代表するペネロペ・クルス、うぬぼれたスター俳優にこれもスペインの名優のアントニオ・バンデラス、老練な舞台俳優にアルゼンチンの大御所オスカル・マルティネスという豪華布陣。 なかでもクルスのパワハラ演出が狂気の沙汰だ。読み合わせをするふたりの俳優から緊張感を引き出すために、彼らの頭上に巨大な岩石をクレーンで吊り下げる。事故で岩石が落下したら大惨事という状況に、観る者の笑いは凍りつく。サミュエル・フラー監督の「映画は戦場だ」という名言が思い浮かぶ。全篇こんなシーンの連続で、そのセルフパロディと茶番劇の狭間を演じるクルスの、『パラレル・マザーズ』に続く怪演が最大の見どころ。 監督は『ル・コルビュジエの家』(09)、『笑う故郷』(16)などでスタイリッシュな映像が絶賛されたガストン・ドゥプラットとマリアノ・コーン。

23/3/12(日)

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