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演劇鑑賞年300本の目利き

大島 幸久

演劇ジャーナリスト

『蜘蛛巣城』 KAAT神奈川芸術劇場プロデュース

三船敏郎の武将が無数の矢で射られる表情、山田五十鈴の妻が血塗られた手を洗う形相。黒澤明監督による傑作映画『蜘蛛巣城』が公開されたのは昭和32年(1957)。日本のみならずルーカスやスピルバーグらをアッと言わせた画期的な夫婦の演技だった。 赤堀雅秋が演出する舞台版『蜘蛛巣城』の挑戦的な上演である。早乙女太一が鷲津武時、倉科カナが妻・浅芽。シェイクスピア四大悲劇のひとつを日本の戦国時代に置き換えた翻案作品だ。初共演、初のシェイクスピア劇を演じるふたり、さらに実に個性的で舞台経験豊富な脇役陣が揃った。 上演台本は斎藤雅文と演出も、出演も引き受けた赤堀雅秋の“雅・雅”コンビだが、原作は人間の強欲、そのための裏切り、疑心暗鬼、そして欲望の醜い争いが渦巻く物語である。 主人公のマクベスに当たる鷲津武時は戦闘勝利の帰路、老婆の予言を受ける。これがすべての始まり。「きれいは汚い、汚いはきれい」と謎めいた言葉を吐く老婆は、マクベスにあたる鷲津が「今宵からは北の館のお殿様に」、バンクォーに当たる盟友の田倉則保には「あなたのお子がやがて蜘蛛巣城のご城主様」と、ふたりとも信じ難い予言を与える。 主人殺しをためらう武時を叱咤する浅芽。早乙女、倉科の台詞術と表情に注目しよう。軍師・田倉が長塚圭史、バンクォーに当たる三木義明が中島歩。そして老婆一。銀粉蝶はまさには嵌り役だ。山田五十鈴に迫る“怪演”を待っている。

23/2/18(土)

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