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笠井 信輔

フリーアナウンサー

死体の人

これがなかなか面白かった。死体役ばかりが回ってくる売れない俳優(奥野瑛太)の生活をユーモアとペーソスで描く。『蒲田行進曲』などは切られ役が主人公だが、もう死んでいる役(笑)なのだ。いくつも出てくる“死体役者”に本当にありそうな撮影裏話が楽しい。しかし、悶々とした人生であり、そこで思い切って呼んだデリヘル嬢(唐田えりかが魅力的に好演)との行き詰った者同士の交流が意外な方向に物語を向かわせてゆく。また、家族の物語でもあり、売れない俳優を見守る母(烏丸せつこ)のエピソードには泣かされた。「死体役の息子だって生きている」という母の思いがスクリーンにあふれ出す。ニュー・シネマ・パラダイスだね。

23/3/14(火)

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