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アニメも含め時代を象徴する映画を紹介
堀 晃和
ライター(元産経新聞)、編集者
フェイブルマンズ
23/3/3(金)
TOHOシネマズ 日比谷
少年時代から8ミリカメラを回してきた“永遠の映画小僧”とも言うべきスティーヴン・スピルバーグ監督の自伝的作品だ。舞台はアメリカ。物語は1950年代から始まる。主人公はサミー・フェイブルマンという少年。冒頭、両親と初めて行った映画館で『地上最大のショウ』を観て感動する様子が描かれる。まさにスピルバーグ自身の幼少時の体験と重なる挿話だ。 『地上最大のショウ』の列車の衝突シーンに興奮したサミーは、玩具の汽車を買ってもらい、その光景を何度も再現して楽しんでいた。撮影して残せば、おもちゃは壊れないという母親の助言で、父親の8ミリカメラを手にしたサミーは映画製作にのめり込んでいく。 妹3人を含む一家6人は科学者の父親のキャリアアップに伴い、ニュージャージーからアリゾナへ。次に映画産業が盛んなカリフォルニアへと住まいを移す。家族の微妙な人間模様を描きながら、サミーの映画への憧れがストレートに語られる構成が胸を打つ。 ツボを押された見所は二つ。母親が車のヘッドライトに照らされながら優雅に舞う描写は映画が光の芸術であることを強く意識させる。もう一つはやはりラストシーン。観終わった後、映画好きの仲間と語りたくなった。
23/2/26(日)