愛だけではどうすることもできない、という残酷な現実を突きつける映画だ。息子の心の闇を父親が救おうとすればするほど、事態がもつれていく様が痛い。 その根本にあるのが、再婚相手と暮らす父に対して「捨てられた」と恨み続ける息子と、「自分にも生活があることをわかって欲しい」と思う父親のすれ違いなのか、あるいは息子のメンタルの問題なのか。映画は答えを出さないが、深く考えるきっかけを与えてくれる。 前作『ファーザー』でアンソニー・ホプキンスにアカデミー賞をもたらしたフロリアン・ゼレール監督が、今回はヒュー・ジャックマンから素晴らしい演技を引き出していて、思わず一緒に嗚咽しそうになった。

23/3/16(木)