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アニメも含め時代を象徴する映画を紹介

堀 晃和

ライター(元産経新聞)、編集者

ノック 終末の訪問者

周囲には自分以外誰もいない静かな場所に、突然“静かに”見知らぬ人物が姿を見せる。相手がどれだけ親しみを込めても、怖さは心から消えていかない。不気味な静寂が恐怖感を押し上げる。そんな冒頭のシーンだった。監督は名作『シックス・センス』(1999年)など謎めいた独特の世界観で観客を魅了してきたM・ナイト・シャマラン。先の読めない展開と空気が凍り付くような恐怖を描写した映像で、新感覚のスリラーに仕立て上げたのが本作だ。 舞台は人里離れた森の山小屋。アンドリューとエリックという男性カップルの養女ウェンが屋外で遊んでいると、レナードと名乗る大男に声をかけられた。「少し話せるかい?」と柔和な表情を見せるが、不穏な雰囲気をまとった男女3人も現れて…。アンドリューら一家3人が立てこもった山小屋に押し入った4人は信じがたい要望を話し出した。「私たちは世界の終末を防ぐために来た。君たち3人から犠牲になる者を選んでくれ」 一家の眼前で繰り広げられる光景は、ここでは触れない。スクリーンで確認してほしい。3人にとっては“狂気”、4人にとっては“正気”。登場人物の表情や仕草を通じて、正反対の価値観が揺れ動いていく構成が秀逸だ。

23/4/4(火)

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