評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!
ジャンル横断、センスのいいセレクト
立川 直樹
プロデューサー、ディレクター
苦い涙
23/6/2(金)
ヒューマントラストシネマ有楽町
今やフランス映画界を代表する名匠の地位を揺るぎないものにしているフランソワ・オゾンの作品には外れがない。ほぼ年に1本のペースで長編映画を発表し続けているのだから本当に大したものだが、『焼け石に水』以来20年ぶりに敬愛するドイツの伝説的な映画作家ファスビンダーの名作『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』を現代的な視点を加えてリメイクした『苦い涙』もオゾンの”映画術”を堪能できる極上の仕上がりになっている。助手のカールをしもべのように扱いながら事務所も兼ねたアパルトマンで暮らしている著名な映画監督ピーター・フォン・カントを中心に展開される、かなりダークなパワーゲーム。ピーター役をフランス映画界屈指の人気実力派ドゥニ・メノーシェが完璧に演じ、名優イザベル・アジャーニがオゾン監督作品初登場。音楽の使い方のうまさにも惚れ惚れさせられるし、85分はアッという間だ。
23/5/23(火)