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平辻 哲也

映画ジャーナリスト

波紋

荻上直子監督が、「自身歴代最高の脚本」と自負する最新作は、萩上作品の新章を開いた作品だ。 主人公は夫(光石研)も息子(磯村勇斗)も去った家で、一人暮らす依子(筒井真理子)。どう見ても怪しい新興宗教にハマっているが、その信仰心によって穏やかな日常は保たれている。そんなある日、11年間失跡していた夫が突然、帰宅。これを機に、さまざまな苦難が襲いかかる。 テーマは熟年女性の生き方や苦悩。そこに放射能汚染、介護、新興宗教、障害者差別など社会問題がてんこ盛り。シリアスなドラマなのだが、ヒロインが数々の辛苦に真剣に向き合うほど、クスッと笑えてしまうのは監督の手練さ。絶望的な状況を笑って、楽しめる不思議な作品だ。最後は、とんでもないオチが待っている。

23/5/25(木)

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