A24の快進撃が、どうにも止まらない。A24作品『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』がアカデミー賞7部門を獲得して映画ファンを驚かせたのはつい数ヵ月前のことだが、今度は『Pearl パール』という新作ホラー映画で、観る者の心臓めがけて斧を振り下ろそうとしているのだ。
本作の後日譚にあたる『X エックス』(22)では、古典ホラーをリスペクトしつつも新鮮なひねりを加えて新しいタイプのホラー映画を作り上げたタイ・ウェスト監督。本作『Pearl パール』でもミア・ゴスを再び起用して、最高齢シリアルキラー・パールを若い娘として再生させている(現在製作中の完結編『MaXXXine』とあわせA24初の三部作を目論んでいるようだ)。
スターを夢見る女性パール(ミア・ゴス)はいかにして、凶暴なシリアルキラーへと変貌していったのか……。全盛期のディズニー映画を彷彿させる燦燦とした陽光の下で繰り広げられる、惨劇の数々に戦慄させられる。映画評論サイトのロッテントマトで、「『パール』で鮮血ほとばしる恐怖を生み出せたのはミア・ゴスの見事な演技のお陰だ」と絶賛されるほどに、彼女の天真爛漫な笑顔の裏にひそむ狂気の演技が凄い。
マーティン・スコセッシ監督の、「私は『パール』に夢中になり心をかき乱された」という発言が、心底得心できる新しいタイプの恐怖映画。抑圧される女性が共鳴するような作品を次々に提供するA24の製作スタンスが、観客のすそ野を広げているようだ。
