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映画のうんちく、バックボーンにも着目

植草 信和

フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩

強国に蹂躙され続ける国ウクライナ。第二次大戦下、最初はソ連に、次いで、抬頭したナチス・ドイツに。独ソ戦でのドイツ退却によって再びソ連に領土を奪われる。そして2022年2月、ロシアによる侵攻。大国のエゴへの怒りと小国への同情心と恐怖感、傍観者の無力感。それらの感情を撹拌させ観る者を翻弄させずにはおかない、それが本作『キャロル・オブ・ザ・ベル』という映画だ。 タイトルの『キャロル・オブ・ザ・ベル』とは、ウクライナで古くから歌い継がれている民謡“シェドリック”を基にしたクリスマスソングのこと。第二次大戦下のウクライナ。同じ屋根の下で暮らすウクライナ人、ポーランド人、ユダヤ人の三家族が、無垢な歌詞と優しいメロディのその歌を支えに戦禍を生き抜こうとする物語。『キャロル・オブ・ザ・ベル』という歌が、過去と現在を結びつけるのだ。 何よりも嬉しく、逞しいのは、親を亡くした赤の他人であるポーランド、ユダヤ人の娘たちに加えナチス・ドイツの子どもさえも、自分の子どもたちと同じよう懸命に守り抜くウクライナ人の母の姿。「母は強し」だ。 監督はドキュメンタリーを主戦場とするオレシャ・モルグネツ=イサイェンコ。22年のロシア侵攻が始まることを予感していたかのように、2021年に作り上げていることに驚かされる反戦映画だ。

23/6/13(火)

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