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映画は、演技で観る!

相田 冬二

Bleu et Rose/映画批評家

1秒先の彼

台湾映画『1秒先の彼女』をリメイク。 山下敦弘と宮藤官九郎という初顔合わせの監督・脚本のコンビネーション。 オリジナル版は卓越したコンセプトだけに崩したり、モノにしたりするのは大変なのでは? と考えていたが、結果、非常に独創的な着地となった。 クドカン風というわけでもないし、過去の山下監督作品に同じ系譜があるかと言えば、それも全くない。 とにかく、日本映画というより、京都を舞台にした京都映画なのだ。オリジナル版に対しては、意外なほど忠実だし、主人公の男女を入れ替えてはいるが、そこから逸脱がローリングするわけでもない。 京都というワンダーランドの中で、特殊な設定でありながら、普遍的な人間模様が、うろうろと散歩している趣で、夏にはぴったりの“一杯”だ。 日に焼けて赤ら顔の岡田将生がとにかく抜群で、うっかり彼の出世作『天然コケッコー』が山下監督作であったことを忘れるほど。 京都という場所がいかに捻れた時空を彷徨っているか、ライトな平常心で味わい、誰も傷つけない=傷つかない冒険を成立させうる空間なのかを知ることができる。 夏のひと旅。そんな気分で、ぜひ劇場へ。

23/6/21(水)

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