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春日 太一
映画史・時代劇研究家
インディ・ジョーンズと運命のダイヤル
23/6/30(金)
TOHOシネマズ 日比谷
前作が不完全燃焼だっただけに不安はあったが、払拭してくれた。 昨年の『トップガン マーヴェリック』に続き、映画ファンにとってのご褒美のような作品である。 冒頭からいきなり30分近く続くド派手なアクションに始まり、ほぼ全編がチェイスに次ぐチェイスの連続によって構成されている。列車の屋根での格闘、地下鉄線路を疾走する馬、モロッコの入りくんだ街並でのカーアクション……。いずれも荒唐無稽でスケールが大きく、ワクワクがずっと止まらなかった。 そして何より、あのテーマ曲に乗って大スクリーンを躍動するハリソン・フォードの姿を観ているだけで幸せになれる。当初は老いを感じさせたが、冒険を通して勇ましさを取り戻していく。その様が、たまらなくカッコいい。 細かい話はさておきつつ、とにかく目まぐるしく動きまくる最高のアトラクションを童心に帰ってワーワーと楽しんでいるうちに、気づけばもう終盤。ここまででも大満足なのだが、その終盤の展開がまた良い。 インディは“ある選択”をするのだが、それは第三作『最後の聖戦』でのインディの父親を彷彿とさせるものであった。その様を観ていると「血は争えないなあ」と微笑ましく思う一方、「そりゃあ、過去を探る研究者ならそうしたいよなあ。わかる、わかるよー。よかったねえ……」と我が事のように受け止められ、気づいたら涙が……。 しかも、そこからさらにステキなエンディングが待ち受けていたりするから素晴らしい。 「こうあってほしい」という終わり方を、完璧な形で観客に見せてくれる。まさにこれぞハリウッド映画の王道というべき、見事な締めくくりだった。
23/6/23(金)