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恩田 泰子

映画記者(読売新聞)

CLOSE/クロース

これがずっと続けばいいのに、と思うような時間は大抵、続かない。『CLOSE/クロース』の序盤で映し出されるふたりの少年、レオとレミの日常は、まさにそんな時間だ。彼らは、ともに遊び、ともに走り、ともに世界へ飛び出していくことを夢見ている。だが、その幸福な調和は中学入学を契機に崩れ、悲劇が起きる。美しいものが美しいまま存在し続けられなくなる。なぜか──。実は観客の大半は、その答えを知っている。世の中はそういうものだと半ばあきらめてきた人も少なくないはずだ。だが、それではダメなのだ。ルーカス・ドン監督は、序盤のいきいきとしていとおしい光景、躍動する少年たちの姿を見る者の心に鮮烈に焼き付け、それが失われていく痛みを我がことのように感じさせる。人が他人を規定することの愚かさ、その枠にはまってしまう悲劇を、あぶり出す。是枝裕和監督の『怪物』でも駆ける少年たちが描かれているが、この映画の主人公は、さらにその先へと駆けて、駆けて、観客の心に飛び込んで、すみつく。心の中で何かが、きっと変わる。

23/6/29(木)

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