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水先案内人のおすすめ

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時代と向き合う映画を鋭い視点で紹介

佐々木 俊尚

フリージャーナリスト、作家

Pearl パール

快作から怪作まで不思議な作品を送り出し続けている制作会社「A24」の作品とあれば、観なければなるまい。舞台は第一次世界大戦さなかのアメリカ。農場のひとり娘として、戦地に赴いた夫を待ちながら、木訥な暮らしをしているパール。彼女はスクリーンの華やかな世界を夢みて、いつか農場を出てスターになりたいと願っている。 パールは、町の映画館で映写技師と知り合う。映画が好きな若い主人公と映写技師の出会いといえば、映画好きには鉄板の設定ではないか。イタリア映画の至宝『ニュー・シネマ・パラダイス』や、最近だと『エンドロールのつづき』という素敵なインド映画もあった。そしてこの鉄板設定に沿うように、映写技師はパールに「今夜は君だけに特別なフィルムを見せてあげるよ」と持ちかけ、この先の展開を期待させる……どころか、ここで観させられるフィルムの中身に驚愕。そのあたりから物語はどんどん転がりはじめ、主人公の行動もゆがみにゆがんで行き、得体のしれないゴールへと突き進んでいく。 1950年代風のメルヘンでハッピーな総天然色映画風なのに、あらゆるところのネジが狂ってて恐ろしく怖かった。傑作といわざるを得ない。

23/7/1(土)

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