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水先案内人のおすすめ

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映画から自分の心を探る学びを

伊藤 さとり

映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)

キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩

「キャロル・オブ・ザ・ベル」というクリスマスソングはクリス・コロンバス監督のコメディ『ホーム・アローン』で流れていた。その曲がウクライナの民謡「シェドリック」であったこと、そしてこんなにも悲しげで力強い歌であったことを映画から知った。 本作の驚くべき点は、ロシアによるウクライナ侵攻より一年前にこの映画が作られていたことだ。女性の監督ならではの母と娘を起点に感情が紡がれ、“歌”で心を解きほぐそうとする少女の思いは大人たちの心を開き始める。それは第二次世界大戦に巻き込まれていく同じ建物に住むウクライナ人の音楽一家、ポーランド人家族、ユダヤ人家族を結ぶ物語となり、大人たちが勝手に始めた争いに子供たちの未来が奪われていくというものだった。 戦争映画というと戦火や壮絶さをイメージする人が多いだろう。その描写を求めるならば、それは戦争で残忍になる異様さでもあるとこの映画は伝えているようだった。政府によって正解が提示され、差別さえも正しいことだと誤認してしまう恐るべき集団心理。これを子供の視点に置き換えて描きながら、「子供に罪は無い」という言葉を信念に行動する母親のもとで育った子供は考え方にも影響を及ぼすと本作は伝えていた。この映画の主人公のような人物が世界に増えることを願った、未来への警告と言える作品だった。

23/7/7(金)

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